1.概要
(1)腰痛の定義:
「腰痛」とはいわゆる疾患(病気)の名前ではなく、「肋骨下縁から下臀溝(お尻の下端)までの範囲を腰と定義し、その範囲に起こる痛みやだるさ、痺れなどの症状全般を表します。広義にはいわゆる坐骨神経痛などの下肢症状も含まれます。統計的には様々なデータがありますが、日本人の生涯腰痛有病率は80%ともいわれております。その腰痛の分類としては、大きく以下の2つに分けられます。
①特異的腰痛
腰痛の原因が、脊椎骨折、細菌感染、腫瘍、椎間板ヘルニア、腰椎すべり症などの器質的な原因から起こっていると見いだされた場合の腰痛を表します。
②非特異的腰痛
特異的腰痛にみられるような、腰部領域に明確な器質的以上や神経学的所見が見られないにもかかわらず発生している腰痛を表します。また整形外科等の画像診断などで、圧迫骨折、分離症、ヘルニアなどの所見が認められた場合でも、現時点で生じている腰痛がも必ずしもそれらが原因でないという場合もあり、画像所見だけでなく、触診検査、運動学的検査、神経学的検査なども加えてみていくことが必須になるのですが、これらの検査所見と腰痛の原因が一致しない場合もこの非特異的腰痛に分類されます。
(2)腰痛の原因
脊椎(関節)・神経・筋・靭帯(関節包)・椎間板・内臓・血管などの組織の損傷が腰痛の原因となります。
これらの組織に明らかな損傷がなくても、痛みを伝える神経(後根神経節や侵害受容器などと呼ばれる)が過剰に働きすぎた場合にも腰痛症状を起こすことがあります。
また時として、心身の状態も痛みの感覚と連動しており心因性の腰痛を引き起こすこともあります。
・脊椎骨折
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎分離症
・腰椎すべり症(分離すべり症/変性すべり症)
・腰椎椎間関節症
・腰椎椎体終板変性性腰痛
・筋筋膜性腰痛
・変形性腰椎症/脊椎側弯症
・代謝性疾患由来の腰痛(骨粗しょう症や骨軟化症に伴う腰痛)
・内臓由来の腰痛(腎尿路性、腹膜内病変など)
・脊椎腫瘍由来の腰痛
・脊椎感染症(脊椎カリエスなど)
・血管由来の腰痛(動脈瘤など)
・心因性腰痛(うつなどの精神症状にともなう腰痛)
ざっと挙げただけでも上記ように様々な要因によって腰痛症状がおこります。
2.鑑別診断
上記の通り、腰痛にも様々な原因がありますが、なかでも細菌感染性由来のものや悪性腫瘍など内科的要因に伴う腰痛、椎間板ヘルニアなどの神経起因の場合でも重度の神経症状(膀胱直腸障害、重度の筋力低下)を呈している場合は「Red Flags」として、徒手的な治療や運動療法などのいわゆる保存療法の適応外として鑑別します。
この場合は早急に専門医の受診が必要です。
その他の要因から起こっている腰痛については、初回施術時の問診、整形外科的徒手検査、運動学検査、神経学的検査に基づき、腰痛の根本原因を探り出したうえで、症状に合わせた施術を実施いたします。
3.治療法
それぞれの腰痛の原因によって、アプローチ方法は異なります。
腰痛の原因が関節に起因する場合、関節運動学に基づいた治療アプローチで脊椎全体のアライメントを整えていき、症状を改善させていきます。腰部は基本は前屈後屈(体を前後に倒す)動作が中心ですが、側屈や回旋を伴ったずれが生じやすい関節であります。このずれが腰椎周辺の神経組織や筋肉などの軟部組織に影響を与えることがしばしばあり、腰椎関節のわずかなずれを修正することは症状を改善させるうえで非常に重要になります。
腰痛が筋肉や靭帯組織などに起因する場合でも、まずは上記のように腰椎にずれがないかを細かく確認したうえで、最も腰痛の原因となっている筋群や靭帯(関節包)を触診や運動学検査で絞り出し、筋膜・靭帯リリースなどのテクニックを用いて施術していきます。
腰痛の原因が神経組織に起因する場合は、神経学検査を細かく実施したうえで、問題となる神経に対して、神経リリースなどの治療法を用いながら症状を改善させていきます。椎間板ヘルニア、梨状筋症候群などの神経症状の場合は多くの場合、下肢への神経症状(しびれなどの知覚鈍麻、筋力低下)が生じます。この場合、腰椎周辺の神経組織の治療だけでなく、下肢の神経(坐骨神経)の状態も細かくみていきながら施術していきます。
また下肢のしびれなどの症状の原因が神経組織ではなく、筋肉や靭帯起因の場合でも出ることがあります。この場合の下肢症状は関連痛と呼ばれるもので神経組織の損傷による下肢症状とは原因が異なるため、起こっている下肢症状(しびれ)がどちらから起こっているのかを正確に鑑別したうえで、適切な施術をしていきます。
4.運動療法
こちらも各腰痛の原因構造によって選択すべき運動療法は異なります。
ただ腰痛に対する運動療法として共通する点としては、腰椎骨盤周囲の筋群、特にローカル筋と呼ばれる多裂筋、腹横筋などのいわゆるインナーマッスルの機能活性化、また腰部を挟んでいる関節:胸椎(胸郭)と股関節の可動性の獲得が重要となってきます。
各腰痛の症状に合わせて、また患者さん一人一人の現在の状態に合わせて種目を選択して実施していきます。
腰痛改善のための運動療法は徒手的な治療と合わせて非常に重要です。逆に施術で症状がとれたとしても正確な運動療法が実施されていなければ、症状の再発にもつながるため、ご自宅でも継続してできるようなメニューを中心にして、丁寧に指導させていただきます。
詳細は当院までお気軽にお問い合わせください。
とくやま徒手療法研究所・施術院
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