腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Spinal Stenosis)

脊柱管狭窄症は、脊柱管の形状や大きさ(直径)が、何らかの要因で狭くなり、脊柱管内を走行している神経(脊髄、神経根)を圧迫されることによって、腰~下肢にかけての痛みや神経症状をきたす症状のことをいいます。

1.おもな症状

多くの場合は、腰痛をともなった神経性間欠跛行がみられます。これは、狭窄に伴い神経根や神経血管が圧迫されることによる下肢への循環不良が原因で、「数百メートル歩くと脚の痺れと痛みで歩けなくなり、前かがみになったり、座って休むと症状が改善する」というのが特徴です。逆に、腰椎伸展(腰を反らす)姿勢では症状が増悪されます。また夜間寝ているときにこむら返りをおこすこともしばしばあります。

またこの他、腰から臀部、大腿後面、ふくらはぎなどの知覚障害(しびれ、感覚麻痺、筋力低下)や、重症例では、膀胱直腸障害(残尿、尿意切迫、閉尿)=馬尾神経障害がみられることもあり、この場合には早急に専門医での精密な検査が必要となります。

また、間欠性跛行の鑑別診断として、閉そく性動脈硬化症によるものがあります。これは血管の動脈硬化(特に下腿動脈)により、血管が細くなったり、つまったりすることにより、歩行時に足のしびれをきたす疾患のことで、脊柱管狭窄症と同じような間欠性跛行が出現します。しかしこの場合の間欠性跛行は、歩行時の前屈姿勢などでの改善は見られず、安静時にも症状が出ることで、脊柱管狭窄症によるものではないと鑑別されます。

2.原因と好発部位

原因には大きく先天性と後天性の2つがあります。

先天性(発育性)脊柱管狭窄:脊柱管が正常より狭いまま成長したことによる先天的狭窄。

後天性脊柱管狭窄①変性脊柱管狭窄(加齢に伴う関節変性、②合併狭窄(先天性狭窄と変性性狭窄の合併、腰椎ヘルニアとの合併など)、③医原性狭窄(腰部の手術後による狭窄)、④外傷後狭窄(腰部骨折後などに起因する狭窄)

この中でもっとも多い発生原因になるのが、変性脊柱狭窄であり、特に60代以降の高齢者(男性に多い)にみられます。

加齢に伴い、椎間板が変性することで、椎間板圧が徐々に減少し、椎間板の衝撃吸収機能が低下します。これにより椎体後方(腰骨の後外側)に骨の棘(=骨棘)が形成され、黄色靭帯の肥厚(腰骨の後ろにある黄色かかった靭帯)し、それらが結果的に脊柱管や脊柱管からでる神経根を圧迫することにより症状が出現します。

好発部位としては、5つある腰椎の4番と5番の間(L4-5)、腰椎5番と仙骨の間(L5-S1)に多く発生します。

3.鑑別診断

閉そく性動脈硬化症・バージャー病
腰椎椎間板ヘルニア
筋膜・靭帯・関節包に起因する下肢のしびれ症状

4.治療法

まずは、立位で姿勢検査を行い、身体全体のバランス、代償姿勢などの有無を判別します。次に座位と腹臥位で脊柱全体(頸から骨盤まで、場合によっては下肢まで)のアライメントの精密な触診を行い、原因となる組織、構造を探りだします。

腰部は全体的には丸みを帯び(もしくは平坦)、骨盤は後傾位のアライメントを呈しますが、多くのケースでL4-5-S1にかけては、過伸展方向へのずれ(サブラクセーション)がみられることが多いです。
そのため、まずこれらの過伸展方向のずれを関節運動学に基づいた治療アプローチ(AKTR)を使って調整し、神経の圧迫を構造的に解消させます。

次に、筋膜リリーステクニックを用いて、周辺の軟部組織の癒着や緊張を丁寧に解消させていきます。特に仙骨周辺の靭帯は高い確率で線維化(変性)しているので、その周辺も丁寧にリリースします。

症状が改善されたら、良い状態を維持するための、ストレッチや家でできるエクササイズを提案いたします。

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