変形性膝関節症

1.概要

 変形性膝関節症は、膝関節(大腿脛骨関節)を形成している大腿骨遠位部と脛骨近位部の関節軟骨に力学的ストレスがかかることになどにより、関節軟骨の摩耗・損傷がおこり、それらに続発的に生じる関節滑膜組織の炎症、軟骨成分の修復不全と骨増殖(骨棘という)がおこることで、結果的に関節部の変形が進行していく疾患を表します。

一般的に60歳代以降に発症しやすく、男女比率は約4:1程度と言われております。



(1)分類
変形性(膝)関節症の病院としては、一次性と二次性があり、二次性は外傷による損傷、代謝性の疾患による影響、腫瘍等による関節破壊などの変形性関節症になるうえでの明らかな原因のあるものを二次性変形性(膝)関節症といい、一方明らかな誘因がなく、発生するものを一次性変形性(膝)関節症として分類します。

一次性変形性膝関節は明らかな原因の特定ができませんが、
①継続的に生理的範囲を超える荷重負荷が膝関節にかかる
②これまでの膝関節周囲の既往歴(靭帯損傷など)
③遺伝的要因など
がその根底要因として考えられています。

(2)解剖生理学
関節軟骨は、硝子軟骨という弾性に富んだⅡ型コラーゲン組織と軟骨細胞、水分、プロテオグリカンと呼ばれるムコ多糖タンパク複合体から構成されています。関節軟骨自体には損傷にともなう痛みを伝える神経組織(侵害受容器)が存在しないため、膝関節症による痛みは損傷・変形した軟骨組織そのものからよりも関節周囲を覆っている関節包や滑膜組織から発せられているとされています。

したがって、膝関節に何らかのストレスがかかることにより、軟骨成分が摩耗し、摩耗して破壊された軟骨成分がデブリスという摩耗粉となり関節内に放出される。それに伴って滑膜組織がデブリスを生体異物と認識することによって炎症を起こし、関節内にマクロファージなどの免疫物質が放出される。その結果として関節に水が溜まり(関節水腫)、可動域制限とともに膝関節に痛みを生じさせるという機序をたどります。 

整形外科などで「注射で水を抜く」というものは、この滑膜炎症反応の結果たまった炎症物質を含んだ水分を注射器で吸引しています。

2.症状

初期の変形性膝関節症は、朝起きた時のこわばりを伴った痛みなどがありますが、レントゲン撮影等では異常が見られないことが多いです。(下写真Grade1)

次第に、関節裂隙(関節の隙間)が狭小化し、最終的には下写真Grade4のように裂隙が消失し、骨棘と呼ばれる骨の棘が形成され、この段階になると膝の屈伸可動域は大幅に制限され、椅子から立ち上がる時などの荷重時や歩行時の痛みもより顕著に出現します。屈伸可動域では屈曲も制限されますが、伸展可動域が強く制限され、これが歩行時の痛みの増強と歩行効率を低下させることにつながります。

変形性膝関節症は、関節の内側と外側の両側に起こりますが、内側変形が優位に発生率が高くいわゆるO脚型変形を来します。O脚つまり膝の内反変形がおこることで、膝の外側の靭帯(外側側副靭帯)に伸張ストレスがかかり、やがて靭帯が緩んでしまうことで、内反動揺性という脚をついたときなどに膝が外方向へガクッとずれる現象も起こりやすくなります。

3.治療法

まずは症状(変形)の進行を止めることが最重要です。
主な治療法としては以下になります。

(1)関節運動学的治療アプローチ
 ①膝関節の他動的アライメント調整
 ②股関節・足関節をはじめ全関節の運動連鎖の修正
(2)膝関節周囲の軟部組織(靭帯・関節包・筋肉)のリリース
(3)運動療法
 ①膝関節周囲筋をはじめ全体的な筋力強化
 ②前庭・小脳機能(バランス感覚)の活性化
 ③歩行訓練

関節運動学的治療アプローチでは、膝関節のアライメントを可能な限り調整します。
変形の進行程度にもよりますが、まずは伸展可動域改善が特に歩行時には重要であると考えており、これを改善できるよう、膝関節だけでなく周辺の関節(股関節や足関節)の運動連鎖も考慮しながら治療していきます。

また膝関節痛のもととなる関節包・滑膜組織については多くの場合線維同士の癒着が生じていることが多く、これらを丁寧にリリースしていきます。

運動療法では、膝関節を中心とした全身の筋力強化はもちろん重要ですが、重心位置の調整、バランス感覚などの前庭小脳機能の向上は歩行時などには特に重要です。とくにご高齢になればなるほどこの前庭小脳機能(バランス機能)は低下しやすくなると言われており、筋力が十分にあったとしてもバランス感覚低下があれば、転倒しやすかったり、そもそも筋力を最大限発揮できなかったりといった運動効率の改善につながらないことも多いため、特に重視して処方していきます。

とくやま徒手療法研究所・施術院

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