肩関節インピンジメント症候群

1.概要

肩関節は、正式には肩甲上腕関節と言い、上腕骨(上腕骨頭)と肩甲骨(関節窩)で構成される関節です。

肩関節インピンジメント症候群は、腕を挙げるなどの日常動作や投球などのスポーツ動作中に肩甲上腕関節周囲に生じる症状のことを言います。インピンジメント(Impingement)”という言葉自体は”衝突“という意味を表します。

2.分類と原因

肩峰下インピンジメント

腕を上げる時に上腕骨頭が烏口肩峰アーチ(下図)を通過する際、インナーマッスルである棘上筋(腱板)や滑液包が肩甲骨の肩峰と衝突することで炎症を起こすことで、疼痛を引き起こします。

肩を挙げていくと途中60°付近で痛みが現れ、だいたい挙上120°を超えたあたりでは痛みが消失する”Paiful Arc Sign”というが陽性となります。

肩峰下インピンジメントの原因としては、関節周囲の組織(関節包)などの拘縮、棘上筋などの腱板組織の肥厚(線維が厚くなること)にともない、肩関節の屈曲などの動作の際に、肩峰下で衝突が起きやすくなることが発生原因となります。

野球の投手や水泳のクロール、バレーボールのスパイクなどのいわゆるオーバーヘッドスポーツをする人でもよく起こります。

後上方インターナルインピンジメント

肩峰下インピンジメントが関節包外で起こるインピンジメントに対して、インターナルインピンジメントは、棘上筋や棘下筋の内側(関節包面)が後上方関節唇と衝突するため、関節内インピンジメントと呼ばれることもあります。

後上方インターナルインピンジメントは、野球などの投球動作のコッキング期といって、肩関節が最大に外旋された際に、その外旋可動域が過剰な場合などに棘上筋や棘下筋の内側(関節包面)が後上方関節唇との間で挟まりこむように衝突することで発生します。

また上腕骨の外旋可動域に対して、肩甲骨や胸郭の内転あるいは伸展の可動性が相対的に低下していることも結果的に上腕骨の過剰外旋を代償的に発生させることになり、それがインターナルインピンジメントの原因となると考えられています。

前上方インターナルインピンジメント

前上方インターナルインピンジメントも関節内で起こるインピンジメントのためインターナルインピンジメントの分類に入ります。

ボールを投げた後(ボールリリース)の時のような肩関節を屈曲内旋時に上腕二頭筋長頭腱が肩甲骨関節窩(肩関節窩)の前方で挟み込まれるように衝突することで発生します。

3.治療法

肩峰下インピンジメント/インターナルインピンジメントどちらの場合も、まずは脊柱のアライメントの調整が重要です。

とくに胸椎が過剰に後弯している猫背姿勢になっている人の場合、肩関節の挙上外転外旋の可動域は低下していることが多く、これが肩峰下/インターナル両方のインピンジメント引き起こす原因となります。

問診時に可動域検査および正確な触診を実施し、原因となる胸椎(椎体)にアプローチして、後弯変位を改善させます。

胸椎の後弯変位に付随するように肩甲骨は外転方向へ、上腕骨は前上方へ変位していることが多いため、これらのアライメント異常も修正します。

関節のアライメントが修正できれば、次に腱板や関節包などの軟部組織にアプローチします。
インピンジメント症候群のほとんどのケースで、これらの軟部組織には線維化や肥厚が生じていることが多いため、リリーステクニックなどを用いながら対象となる軟部組織に対して徒手的にアプローチを加えて改善させます。

4.運動療法

インピンジメント症候群では運動療法は必須となります。
肩関節自体のスムースな関節運動を回復させることはもちろん重要ですが、肩甲骨や胸椎などの関節の可動性を回復させることは同様に非常に重要となります。

  • 胸椎→伸展・回旋可動域の獲得
  • 肩甲骨→上方回旋・内転・下制動作の習得
  • 股関節→屈曲・内旋可動域および筋力の向上
  • 全身のコーディネーションの再教育

上記に重点を置いて、施術後に運動療法もみさせていただいております。

詳細は、お気軽にお問い合わせください。

とくやま徒手療法研究所・施術院

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