外反母趾

1.外反母趾とは

足の骨は28個の骨の組み合わせで形成されております。そしてさらに、後足部・中足部・前足部の3区画に分類されます。

後足部:踵骨と距骨
中足部:舟状骨・立方骨・楔状骨(内・中・外)
前足部:中足骨(1~5)・基節骨(1~5)・中節骨(2~5)・末節骨(1~5)
※種子骨:2個 計28個

①前足部
Distal phalanges:末節骨(1~5)
Middle phalanges:中節骨(2~5)
Proximal phalanges:基節骨(1~5)
Meta-Tarsal:中足骨(1~5)


②中足部
Cuneiform:楔状骨(内側・中間・外側)
Navicular:舟状骨
Cuboid:立方骨


③後足部
Talus:距骨
Calcaneus:踵骨

このうち、母趾基節骨以遠がMP関節部から外反・回内変形したものを外反母趾といいます。

母趾趾骨の外反・回内とともに、第一中足骨は内反・回外を伴なって内側(体の中心側)に突出し、結果的に母趾基節骨とMP関節で「くの字」に変形し、変形部に有痛性腱膜瘤(バニオン)を形成し、これが外反母趾における疼痛の原因となります。

2.外反母趾になる原因

①扁平足(外反扁平足)

扁平足とは、一般に足の舟状骨が下制し、土踏まず部分(内側縦アーチ)が消失した「外反扁平足」のことを言います。外反扁平足は先天的なものと足関節捻挫などにともなっておこる後天性のものがあります。いずれにしても外反偏平足の場合、距骨は内転底屈していることが多く、距骨下関節は相対的に外反位にあります。距骨内転底屈により舟状骨は下方向に押し下げられ(下制)、距骨に対して相対的に回外します。立方骨は常に舟状骨の動きに連動しますので、これも下制します。舟状骨と立方骨の下制に伴い、3つの楔状骨は外方へ変位し相対的に内転(内転)します。楔状骨の内転(内反)にともない、中足骨(特に第1中足骨)も内反することにより、MP関節部で捻じれが生じ、結果的に母趾基節骨は外反回内方向へ転位することで外反母趾が完成します。



②凹足(外側アーチ下制)

扁平足と違い、凹足の場合は内側縦アーチ機構が過剰に形成されていることもあり、ある意味、関節の剛性が高いため外反母趾は生じないと思われるかもしれませんが、凹足も外反母趾の一要因になります。

凹足の場合、偏平足の逆で距骨は外旋背屈位、舟状骨は挙上回内位で安定していますが、立方骨が舟状骨に対して相対的に下制回外位となり、これは外側縦アーチの低下を生じさせます。立方骨下制に伴い、先ほどの扁平足の場合と同じで、楔状骨は外方へ変位することで中足骨は内転内反変位し、MP関節部で捻じれ作用が発生し、母趾基節骨が外反回内変位することにより、結果的に外反母趾変形になります。

また、アーチが低下しないことで荷重が踵部と第1中足骨骨頭(MP関節)に集中することも外反母趾の原因になるとも考えられます。

③足関節捻挫に伴う続発症

足関節捻挫により周辺の靭帯組織の損傷をともないます。靭帯損傷により足部の骨同士の連結が緩むことで偏平足などの二次的な問題を発生させます。扁平足がおこると先ほどの外反扁平足~外反母趾と同等のメカニズムで外反母趾変形になります。


④ヒールなどのつま先の細い履物による

ヒールなどの先の細い履物は、母趾基節骨の外反回内方向への変形を助長させる外力が働き、外反母趾変形の原因となります。



⑤関節リウマチの合併症

関節リウマチは、関節部の滑膜におこる自己免疫疾患ですが、この関節部の滑膜で自己免疫応答により、組織破壊と組織の異常増殖を繰り返した結果、関節破壊(関節変形)に至り、変形は四肢の関節中心に起こりやすく、外反母趾変形も引き起こします。

⑥遺伝的要因

靭帯組織などのコラーゲンの剛性が不足している関節弛緩性などは外反母趾変形の原因になります。

3.症状

①MP関節部の違和感(靴があたったときなど)
②痛み(圧痛、歩行時荷重痛、安静時痛)
③MP関節部の外反変形(「くの字」変形となり小指側も向く)
④MP関節包の肥厚(バニオン形成)
⑤長母趾屈筋などの屈筋群、足部内在筋群の筋力低下
⑥片脚立位バランス機能低下 など

4.治療法

①徒手的療法

まずは治療の第一選択になります。MP関節部での母趾基節骨あるいは第一中足骨の高度な骨変形や関節強直がなければ、改善の可能性はあると考えます。治療法としては、まず患部(外反母趾部:MP関節部に手を加える前に、中足部(側に舟状骨・立方骨)、後足部(距骨下関節)のアライメントを調整することに重点を置きます。先ほどにもあったように外反母趾になる要因として、後足部と中足部のアライメント不良が原因で結果的に外反母趾になっていることが非常に多いためです。そして足部だけでなく、膝関節、股関節など他の関節との運動連鎖も外反母趾の治療を行う上では非常に重要となってきますのであわせて調整していきます。

主に治療テクニックを用います
・関節運動学に沿った治療アプローチ(アライメント調整)
 →距骨下関節・舟状骨・立方骨・中足骨に対しての関節アジャストメント
・MP関節外側関節包リリース
・母趾内転筋リリース
・背側骨間筋リリース
・長母趾屈筋リリース
・種子骨調整


②運動療法

普段の姿勢や重心の掛け方、歩き方などは足部のアライメントに非常に多くの影響を与えています。不適切な重心の掛け方や不適切な身体の使い方は外反母趾に限らず足部のトラブルを引き起こす原因になることもしばしばあります。

上記のとおり外反母趾は、徒手的にアライメントを調整することでも一時的に改善は可能です。しかし身体の使い方(特に重心位置)が不適切であればすぐに再発することも多いため、適切な重心位置の訓練、足部のトレーニング(長母趾屈筋、長母指外転筋、足部内在筋)などを施術に加えて処方していきます。


③手術療法

外反母趾部の角度が40度以上になるような変形になると母趾基節骨がMP関節部で亜脱臼し、骨変形、バニオン蓄積も高度になり、疼痛もつよくなります。母趾が変形することによりそれが他の趾にも影響し、バランス機能も高度に低下などの症状もあれば、観血的に骨切り術などの手術療法が選択される場合もあります。

詳細は当院までお気軽にお問い合わせください。

とくやま徒手療法研究所・施術院

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