仙腸関節の痛み

骨盤帯は寛骨(腸骨・座骨・恥骨)と仙骨・仙骨よりなりますが、そのうちの仙骨と左右の腸骨とで形成される関節のことを仙腸関節といいます。

仙腸関節は仙骨の両外側部と左右一対ある腸骨の内側部でくの字の関節を形成し、通常は各々の関節面がしっかりかみ合い、周辺を靭帯組織で覆われた状態になっており、可動性はほとんどないと言われております。



しかし、仙腸関節には前後(矢状面)、左右(前額面)、水平面でわずかな可動性をもっており、仙腸関節のこのわずかな可動性が前屈や後屈をはじめとする様々な身体活動で重要な機能を担っております。

仙腸関節痛は、このわずかな仙腸関節の可動性の障害や、ズレ(サブラクセーション)がおこることによって生じる痛みのことをいい、痛みの範囲は仙腸関節部から症状によっては臀部~大腿部外側周辺まで拡がる場合もあります。

仙腸関節痛は腰痛の一部に分類されますが、腰痛の原因が仙腸関節由来のものである割合は、約20%程度ともいわれております。

仙腸関節を痛めるおもな原因

  • 起床時になど身体の硬い時に顔を洗うなどの前屈動作をした際に仙腸関節部にストレスがかかる
  • 前屈位での重量物の挙上の際に仙腸関節面でズレ(サブラクセーション)が生じる
  • 不良姿勢などのアライメント不良による仙腸関節部への微細な損傷(マイクロトラウマ)の蓄積

仙腸関節痛の特徴

  • 仙腸関節部の痛み、ひどい場合は臀部~大腿部外側に拡がる
     →椎間板ヘルニアの痛み(神経痛)と鑑別が必要
  • 仙腸関節部(PSIS:上後腸骨棘)の痛み
  • ソファーや車のシートなどの低い椅子に座っている時の痛み
  • 椅子から立ち上がったりするときの痛み
  • 顔を洗う時など体幹を前屈させたときの痛み
     →後屈させたときの痛みもある
  • 胡坐を組んだ時の痛み
  • 歩行時痛

※仙腸関節の痛みの範囲(関連痛)

仙腸関節痛の治療法

  • 仙腸関節部のアジャストメント(AKTR法)
    前述の通り、仙腸関節は仙骨の外側部と左右の腸骨内側関節面とで関節を形成しており、これらは特に体幹の前屈/後屈動作で連動して動きます。

    おじぎをするような体幹の前屈動作では脊柱の屈曲(背骨が丸くなる動作)に合わせて、骨盤(寛骨+仙骨)は前傾します。したがって仙腸関節自体も骨盤全体として前傾方向に動いていきますが、体幹前屈の途中から仙骨は寛骨(腸骨)に対して相対的に後傾位となります。これは仙骨の起き上がり運動、あるいはカウンターニューテーションといいます。寛骨に対して仙骨が相対的に後傾位を維持することで、体幹の過度の前屈による前方への転倒を防ぎます。

    一方、体幹を後方に反り返るような後屈動作では、前屈動作と逆の動きが生じます。したがって脊柱が伸展していくにしたがって骨盤(仙骨+寛骨)は後傾していきますが、一定のところまで後屈したところで仙骨は相対的に前屈します。これは仙骨のうなづき運動、あるいはニューテーションといいます。寛骨に対して仙骨が相対的に前傾位を維持することで、体幹の過度な後屈が抑えられ、後方への転倒を防ぎます。

    説明が少し長くなりましたが、要するに仙腸関節痛が起きている場合、仙骨と腸骨(寛骨)の前屈後傾動作の連動性に異常が生じている場合が非常に多いです。

    治療ではまず仙骨側の動きの異常を触診検査、運動学検査で導き出し、正しい関節位置、運動方向に関節運動学的治療テクニックを用いて修正していきます。次に腸骨側にもアライメントや動きの異常があれば、同様に修正します。

※左図:Nutation(ニューテーション):寛骨に対する仙骨の前屈(うなづき)運動

※右図:Counter Nutation(カウンターニューテーション):寛骨に対する仙骨の後屈(起き上がり)運動

  • 仙腸関節周囲の靭帯のリリース
    仙腸関節のズレ、運動障害が生じている場合は、仙腸関節に付着する靭帯組織に過度な伸張ストレスが生じていることがほとんどのケースで見られます。特に後仙腸靭帯や仙結節靭帯は高い頻度で伸張性に緊張が生じており、これらをリリーステクニックを用いて改善させていきます。

    とくに仙腸関節由来の痛みが仙腸関節部だけでなく、臀部や大腿外側にまで広がっている関連痛を伴なう場合、これらの靭帯を治療することは必須となります。


    とくやま徒手療法研究所・施術院
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