伏在神経性の膝痛

1.伏在神経とは

伏在神経は、第1腰椎~第4腰椎から出た大腿神経が鼠径靭帯の下方で枝分かれした神経線維のことです。
大腿神経は大腿四頭筋や腸腰筋などの大腿前面の筋肉を支配する運動神経を持つのに対して、伏在神経は膝関節内側~下腿の内側周辺までの感覚を支配する神経線維となっています。

伏在神経は、上図の通り本管である大腿神経鼠径靭帯の下方で枝分かれした後、ハンター管(内転筋管)と呼ばれる長内転筋、内側広筋、大内転筋、縫工筋の内ももに付く筋肉に囲まれた筋膜性のトンネルを通り、膝関節の内上方で内転筋管を出て、膝関節内側から外側へ向かう膝蓋枝とそのまま下腿内側を足関節内側の手前まで下降する内側下腿皮枝(縫工枝)へ分かれます。

伏在神経線維が内転筋管内で圧迫されたり締め付けられたりして起こる絞扼(こうやく)障害を『ハンター管症候群(内転筋管症候群)』と呼びます。この場合、内転筋管内遠位部にある内転筋腱裂孔の下で絞扼されることが多いです。

伏在神経は内転筋裂孔の部分よりもさらに遠位(膝より)の縫工筋の停止腱付近で伏在神経(膝蓋枝)が縫工筋を貫いて、あるいは縫工筋の下方から出てくる箇所で最も絞扼される頻度が最も多いです。(下右図のinfrapatellar nerveの矢印が指しているあたり)

2.症状

症状としては、膝関節周辺、特に前内側から下腿内側(スネの骨の内側)までに広がるような痛みで、この痛みはしびれを伴なったうずくような痛みであることが多く、歩行時や椅子から立ち上がる時などの運動時だけではなく安静時、特に夜間痛などの症状があるのも特徴的です。

3.鑑別診断

①変形性膝関節症:痛みの部位が類似した場所にあるため間違われることが多いですが、変形性膝関節症による痛みの場合、痛みは関節包や滑膜からの痛みであるので、触診などを中心に鑑別します。

②内側半月板損傷:半月板起因の痛みの場合、関節裂隙部の痛みがあり、この痛みは奥の方から感じられる鈍痛のことが多いです。またマクマレーテストという半月板損傷診断に特異的なテストも陽性となります。

③鵞足炎:鵞足は膝関節内側にある部位の名称であり、膝から5cmほど下がったすねの内側にあり、脛骨(けいこつ:すねの骨)に縫工筋、薄筋、半腱様筋の3つがくっついている場所を指します。鵞足炎はこの3筋が原因になって生じる痛みのことで、まずはこの部位の圧痛、運動痛、などから判断します。鵞足炎と伏在神経の痛みは全く別の疾患ではありますが、伏在神経を痛めたことで鵞足炎も併発する、あるいはその逆で鵞足炎の炎症が伏在神経にも及ぶということは考えられます。

④腰部疾患に伴う神経痛:ヘルニアなどにともなう腰神経叢などの圧迫が原因となり、同部へ放散した痛みやしびれがでることもあります。この場合腰椎3番、4番神経が原因となることが多く、膝関節だけでなく腰部、骨盤周囲の検査もいれながら鑑別していきます。

⑤タナ障害

4.治療法

膝蓋神経起因の痛みの場合、下図のように、膝関節上内側部の内転筋管(ハンター管)での絞扼がおこる場合と、さらに下方の膝関節内側部での伏在神経:膝蓋枝が絞扼されて痛みやしびれを生じている場合の2パターンが考えられます。

まずどちらで絞扼が強く生じているかを細かい触診で判別したうえで、絞扼されている伏在神経と内転筋などのの筋組織をリリースします。神経そのものを触診でとらえた上でリリースしていくので、一般的な筋膜リリースと違い、接触している指の圧が強くなりすぎてしびれなどの症状を増悪させないように、繊細に調整しながら実施していきます。

膝関節周辺の症状の多くは、股関節や足関節など周辺の関節との連動性が深く関係しているため、動きを見たうえで異常があれば、股関節、足関節に対しても治療を実施します。

また、膝関節を中心に間違った体の使い方がみられれば、それについても改善でできるような運動療法メニューもお伝えしております。

(以下の記事もご参考ください。)

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