
大腰筋は第12胸椎椎体前外側面および肋骨突起前方部に起始し、腸骨筋は腸骨窩から起始し、鼠径靭帯の下方付近で一体化し腸腰筋となって大腿骨の小転子に停止する筋肉です。
腸腰筋の作用
腸腰筋(大腰筋)の作用としては、
①股関節屈曲+外旋
②大腿骨頭を股関節(寛骨臼蓋)に安定させる(骨頭求心位の安定性)
③腰椎前弯+骨盤前傾作用(骨盤や下肢固定時:椅子座位や立位など) ※下図
があります。

③について補足すると、
腸腰筋(大腰筋)は腰椎の前弯や骨盤を強制的に前弯、前傾させる作用というより、
多裂筋などと共同して腰椎の生理的な前弯曲を維持させるといった方が作用の説明としては適切になります。
反り腰の場合は、骨盤は過前傾になりますが(後傾になる場合もありますが)、それに伴って腰椎、特に下部腰椎(第4-5腰椎)は過剰な前弯曲(伸展変位)になりやすくなり、その結果腸腰筋は短縮位で硬縮します。
反対に逆のパターン、つまり腸腰筋が短縮位で硬縮することで結果として腰椎過前弯+腰椎前傾⇒反り腰を招くこともあります。
一方で、胸椎を含む脊椎全体が後弯しているようないわゆる猫背姿勢の場合は、腰椎も生理的な前弯曲が失われ(平坦or後弯)、連鎖的に骨盤も後傾位になりやすくなります。この場合、腸腰筋は伸張位での活動を強いられる形になりますが、この腰椎後弯(平坦)+骨盤後傾位という肢位は、腸腰筋の筋線維方向的にその筋力が発揮しにくいポジションとなり、活動性が低下して結果として腸腰筋の筋力も低下します。
腸腰筋由来の痛みとそのメカニズム
腸腰筋の痛みとしては、腰椎過前弯+骨盤過前傾、腰椎平坦/後弯+骨盤後傾のどちらもが原因となり得ます。
前者(腰椎過前弯+骨盤過前傾)の場合、
腸腰筋の硬縮により筋内の循環不良⇒発痛物質の増加⇒痛みという腸腰筋自体が痛みを発する場合と、腸腰筋の短縮⇒腰椎過前弯や骨盤前傾の増大⇒腰椎椎間関節の圧迫負荷の増大、仙骨(仙腸関節や腰仙関節)への負荷増大⇒腰痛発生といったように腸腰筋の短縮が結果として腰椎周辺の関節へ負荷をかけることで痛みに繋がるといった機序も考えられます。
後者(腰椎平坦or後弯+骨盤後傾)の場合、
先ほども記載しましたが、腸腰筋の活動性が低下するため、腰椎や骨盤の生理的前弯が維持できなくなる、つまり腰椎の安定性が低下し、それが結果的に腰椎周辺関節や場合によっては股関節周囲の痛みを発生させる可能性があります。
症状
- 腰椎屈曲時痛(伸展時痛の時もある)
- 患側への体幹回旋時痛(右腸腰筋が原因の場合、右回旋時痛)
- 臥位から起き上がる時の痛み
- 座位から立ち上がる時の痛み
- 同じ肢位で痛みが増悪(座位<立位保持で痛い)
- 便秘
⇒腸腰筋(大腰筋)はその外膜で腸(大腸)と接しており、腸腰筋の緊張や機能低下は腸の蠕動運動の低下に関係する。
※いずれもやや鋭い痛み
※腸腰筋由来の関連痛(下図)は以下のよう患側の腰椎縦方向に波及
前方部(股関節周囲)に痛みが及ぶこともある

施術アプローチ
- 腰椎および骨盤のアライメント修正
⇒下部腰椎は前方変位、上部腰椎は屈曲変位(伸展制限)
を呈していることが多いため、これらの修正は必須 - 腸腰筋のリリース
- 股関節(大腿骨頭)の調整
⇒腸腰筋機能低下があれば大腿骨頭(股関節)へ影響し、
大腿前面痛を呈していることもあるので要チェックとなる - 大腸、腸間膜のマニピュレーション
⇒便秘症状に対して - 運動療法
⇒腸腰筋短縮の場合、腹筋群/殿筋群の促通(筋力アップ)重要
⇒腸腰筋機能低下の場合、腸腰筋自体の促通をはじめ、
胸椎伸展可動域、股関節屈曲可動域の増大も必須
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とくやま徒手療法研究所・施術院
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