呼吸と身体パフォーマンス(効率的な呼吸法の獲得)

呼吸とは

呼吸には外呼吸と内呼吸があります。

①外呼吸:息を吸って、空気中から酸素(O₂)を肺に取り入れ、肺(肺胞)で二酸化炭素(CO₂)と交換する酸素は体内へ、二酸化炭素は呼気とともに体外へ排出させることです。一般的に呼吸というときは外呼吸のことを表すことが多いです。

②内呼吸:酸素は体内(血中で)ヘモグロビンと結合してを各細胞へ運搬する各細胞で酸素を利用して身体活動を行います。使用されたあとの酸素は二酸化炭素と水に変換されます。この細胞内での酸素のやり取りを内呼吸といいます。

つまり呼吸とは、空気中から酸素を取り入れ、細胞の代謝に利用し、代謝によって生じた二酸化炭素を体外へ排出するガス交換のことであります。

呼吸の経路

呼吸の経路は以下の図のようになります。

呼吸の経路
鼻腔(口腔)→咽頭→気管→左右気管支→肺胞→肺胞毛細血管→肺血管→心臓→動脈→全身の細胞→静脈→心臓(右心房)→肺血管・・・→体外へ

酸素の運搬方法
酸素は上記の呼吸の経路に沿って運搬されますが、体内(肺)に取り込まれた酸素の95~99%は肺胞毛細血管で血中のヘモグロビンと結合して血管内を輸送されます。ちなみに、呼気には二酸化炭素だけでなく、酸素も15%程度含まれています。

呼吸の運動学

呼吸の際、肺は自ら伸縮して空気を出し入れすることはできず、横隔膜などの筋肉の収縮によって他動的に膨らまされることではじめて空気の取入れが可能になる。

(横隔膜の動きのメカニズム:上右図)
吸息:
瓶の底のゴム膜(横隔膜)を下に引くと、瓶とゴム風船の間(胸膜腔)の容積が増える。胸膜腔の圧力は大気に比べて低く(陰圧)なり、瓶内の風船(肺)は受動的に膨らみ、それに伴って大気が入り込みます。

呼息:
下方に移動した横隔膜が元の位置に戻ることで、瓶とゴム風 船の間の空間の容積は小さくなる。ゴム風船にかかる圧力が上がる(陽圧)ため風船は押しつぶされ大気が押し出されます。

つまり横隔膜が上下にスムースに動かないと、肋骨(胸郭)や肺が膨らまないために空気を取り込むことができないため、適切な呼吸ができないということになります。

呼吸の神経生理学

呼吸は脳(橋と延髄)で通常は無意識化でコントローされています。(下図)


体内(血中)の酸素分圧や二酸化炭素分圧が変化すれば、それを感知するモニター機能が心臓の大動脈上部(大動脈弓)や頸動脈の傍にし、その時の各分圧をタイムリーに延髄に伝達しています。

延髄は、そのモニター機能からの伝達に基づき、酸素分圧が低下したり、逆に二酸化炭素分圧が上昇した場合に、横隔膜などの呼吸筋に指令をだし、吸気が促進されます。急にによって肺が膨らみ、必要な酸素が供給されれば、肺の伸展度合いに伴って、その情報が延髄に伝達され、その結果、今度は延髄から吸気を抑制し、呼気を促進させる信号が呼吸筋に発せられることで、吸気から呼気へ切り替わります。

正常な呼吸数と呼吸量

ちなみに喘息などの呼吸器疾患がある場合、安静時でも1分間に20回程度(1回呼吸量0.7L以上)になり、精神的緊張時などでも呼吸数や呼吸量は急激に増えます。(過呼吸状態)

そしてこれらの症状がある場合、口呼吸になっている場合が非常に多いです。

喘息や緊張が原因して過呼吸になるのではなく、普段から過呼吸状態にある結果として、喘息症状がおこりやすくなったり、極度に緊張しまうという考え方もあるほどです。

重要:二酸化炭素の重要性

酸素と結合していたヘモグロビンは、細胞に到達すると酸素を手放します。次にヘモグロビンは細胞で使い終えて発生した二酸化炭素と結合します。もしこの時、血中二酸化炭素量が極端に少なければ、酸素はヘモグロビンから乖離せずにそのまま血中を流れたまま肺まで戻ってきてしまうということが発生します。

つまり、血中に一定の二酸化炭素があることが細胞での酸素利用に重要な役割を果たします。言い換えると、血中に一定の二酸化炭素がなければ、新たに取り込まれた酸素をヘモグロビンが二酸化炭素と交換し、細胞で利用することができないということになります。

では、なぜ血中の二酸化炭素濃度が低下しすぎるのでしょうか。原因としては以下が考えられます。

過呼吸(吸いすぎ)・口呼吸・荒い呼吸・深呼吸のしすぎの結果、呼吸を統制する脳が、二酸化炭素濃度の低い状態に慣れてしまうい、少しでも二酸化炭素濃度が増えれば息苦しくなり(脳が息苦しさを感じ)、吸気指令が過剰となります。

さらにこれらの呼吸になる背景には、副鼻腔炎、不良姿勢(猫背など)、精神的緊張、ストレス、激しい運動の繰り返しなどが考えられます。

そしてこれらの呼吸を繰り返た結果、使えやすい、呼吸が浅い、なんとなく息苦しい、肩こりや頭痛が起きやすい、胃腸の調子が悪いといった種々の不調がもたらされることもあります。

ここまでのまとめ

①酸素は細胞の代謝(生命活動)に重要

②呼吸は脳(延髄)でコントロールされている

③呼吸の際、肺は筋肉の力を利用して膨らむ

④酸素は血管内で95%以上がヘモグロビンと結合

⑤酸素が細胞で使われるためには二酸化炭素も必要

正しい呼吸とは

①鼻呼吸をする
・呼吸量の調整ができる(過呼吸になりにくい)
・副交感神経に作用し、精神状態の安定につながる(集中力改善/あがり症の克服)
・鼻づまりの改善につながる
・血圧の調整がされやすい(鼻腔で分泌される一酸化窒素(NO)は抹消血管拡張:血圧低下に作用)
・免疫機能の強化がされやすい。(鼻腔の粘膜組織でのウィルス侵入の阻止

②横隔膜を使って呼吸をする
・横隔膜がしっかり動くことで、体幹が整い、猫背等不良姿勢の改善になる
・横隔膜の上下運動により重心コントロールが可能
・横隔膜以外の余計な筋肉が使われないので、スタミナのロスを防ぐ
・肩こりや肥満の改善の可能性

③しずかな呼吸、量・数とも少ない呼吸をする
・呼吸中枢からの過剰な呼吸指令の抑制
・過呼吸症候群の防止
・酸素-二酸化炭素の交換効率向上
・酸素の利用率向上
・有酸素性能力向上

ポイント

呼吸トレーニング1

•安静時の呼吸量を減らす(目的:耐二酸化炭素能力をつける)
※注意:高血圧(160/110以上)、呼吸器や循環器疾患などがある方は相対的禁忌

①椅子に座った状態で姿勢を正す
②片手を手の甲を上にして人差し指を自分の下唇の下に当てる
③1回の呼吸量を極力少なくしていく(吐いた息の温かい感覚が自分の手の甲まで感じられないように)
④約5分間継続する

※少し息苦しい呼吸を維持することで、必要な血中二酸化炭素濃度に対する耐性を再構築させる

呼吸トレーニング2

仰向け呼吸(目的:横隔膜の活性化+胸郭の可動性向上)
①5秒吸う→5秒吐く→3秒息を止めるというリズムで繰り返す
②息を吸ったときに、お腹全体(前側だけでなく、横、背中、腰)が膨らむように呼吸する。

仰向け、体幹回旋位、クランチ姿勢の3姿位で行う。


呼吸トレーニング3

•しゃがみ込みスクワット(目的:脊椎全体の可動性向上)

→膝と第2趾を平行に(揃えて)しゃがんでいく
→背中全体を丸める
→土踏まずがつぶれないように(踵も浮かさない)
→ボトムポジションで呼吸(背中に空気を入れるイメージ)
→5秒吸う→5秒吐く→5秒止めるを繰り返す

詳細は、当院までお気軽にお問合せください。

とくやま徒手療法研究所・施術院

電話:078-414-8408
メール:j.tokuyama.labo@gmail.com
ライン:toku0034で検索、または以下のQRコードをご利用ください。
Instgram:@tokuyama_mtp_laboで検索、DMでご連絡ください。

※受付時間:8:00~19:30

最新情報をチェックしよう!