浮き趾

浮き趾とは、立位時に足趾(特に母趾)が地面と接しておらず浮いた状態になっており、歩行時にも趾先まで体重移動が正確に行なわれず、これにより歩行時に駆動力が低下している状態を表します。英語では「Floating toe」とも呼ばれています。

本来、足の指までしっかり体重が乗った状態であることで、立位時でも歩行時でもバランスが保てますが、浮き趾になると、立位時のバランス低下を生じさせ、さらに歩行時にはつま先での蹴りだしができなくなり正しい歩行から逸脱した動きにつながってしまいます。

趾を浮かした状態ではバランスをとったり、全身を支えることが難しくなり、高齢者などでは転倒のリスクが高まり、運動選手などでは趾がしっかり使えないことで歩行や走行などの際に駆動力が増加できないことによりパフォーマンスが低下するといったことにつながってしまいます。

浮き趾はどの年代性別にもみられる症状ですが、「子供の時に裸足でたくさん活動しなかった」「小さすぎるあるいは大きすぎる靴を履いていた」などの影響も原因の1つと言われております。

その他、「捻挫や足底腱膜炎など外傷により足部とくに趾の屈筋の筋力低下がする」、「外反扁平足や外反母趾などの足部の構造的変形により物理的につま先に体重が乗りにくくなっている」など外傷がきっかけとなり、二次的に立位時の重心が踵の後方にかかることでさらに浮き趾の状態が増悪してしまうとういう悪循環を引き起こしているということも原因と考えられます。

さらにこの重心の後方変位は浮き趾を起こすだけでなく、骨盤の過剰後傾、脊椎過剰後弯(いわゆる猫背)、頭部前方変位といった不良姿勢の原因にもなり、これが肩こり、頭痛、腰痛などの間接的要因になることも考えられます。

浮き趾に対する治療法

①足部とくに距骨・舟状骨・中足骨のアライメント修正

浮き趾になっている方の多くのケースで、外反扁平足などのアライメント不良を伴なっている場合が非常に多いため、その原因となる足部の骨(距骨・舟状骨・中足骨)のアライメントを徒手的に修正させます。

とくに距骨は前方変位かつ内転底屈変位を起こしていることが多く、運動学的な治療アプローチを使ってこれを改善させます。
距骨の前方変位は立位や歩行の際に下腿(脛骨)が前傾になる動きを制限するため、前方への重心が難しくなります。

重心はより後方へ固定されたままとなり、結果的に趾がうまく機能せずに浮き趾を引き起こすといった悪循環が形成されます。

距骨の前方変位に随伴するように舟状骨は下制回外変位、中足骨は背屈回外変位を起こしているので合わせて徒手的に修正します。


②骨盤や脊柱のアライメント修正

先ほども記載しましたが、浮き趾の場合、骨盤は後傾変位、脊柱とくに胸椎は後弯変形している場合が多いため、これらの変位/変形を修正することは浮き趾の改善に非常に重要となります。

③立位バランスの修正

上の左図のように本来の正しい重心は、「耳の横」「肩(肩峰)」「仙骨の前方」「膝関節前方」「足関節(踵)の前方」を通りますが、浮き趾の方の場合は、「耳の後ろ(頭部前方変位)」「肩の後方」「仙骨の後方(骨盤前方変位)」「膝関節の後方(膝の過伸展)」「足関節(踵)の後方」へ変位しており、これらが結果的に浮き趾を引き起こしていると考えられます。したがって浮き趾の改善にはこの重心位置の修正が必須となってきます。

当院では以下のような運動療法を取り入れております。

①板の上に踵を乗せて立つ
下の写真のようにこの時足先は地面から浮いた状態を維持しますが、決してつま先を挙げて(浮き趾の状態にさせて)バランスを取らないことがポイントです。正しい重心線を保つ意識で立つことが重要であり、実際に試していただくとわかると思いますが、身体のどこか一か所(例えばつま先)でバランスを取ろうとしてもうまく立てません。

正しい重心位置で立てるようになることで自然につま先にも体重が乗り浮き趾が改善されるのがこの運動療法の目的です。

②後方傾斜スクワット
下の動画のように板を前足部に入れてスクワットを行います。これも試していただくとわかりやすいですが、重心が後方にあるままだとスクワットしていく途中で後方に転倒しそうになります。前方へ(つま先側へ)体重をしっかり載せていくことで後方へ転倒せずにスクワットができます。最初のうちは後方への転倒防止のために手すりなどを持ってもらって行います。

詳細はお気軽に当院までお問い合わせください。

とくやま徒手療法研究所・施術院

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