膝蓋骨は大腿骨と膝蓋大腿関節を形成しています。
概要
膝蓋骨の役割
膝蓋骨の役割は主に、大腿骨とその上を走行している大腿四頭筋の筋出力を調整するための、いわば「滑車」のような役割をはたしている骨です。
Quadriceps:大腿四頭筋
Patella Tendon:膝蓋腱(膝蓋靭帯)
Extensor Lever Arm:伸展モーメントアーム
Knee Center of rotation:膝関節回転中心
大腿骨と大腿四頭筋(腱)の間に膝蓋骨があることにより、図のように膝関節回転中心(支点)から大腿四頭筋腱までの力学的距離(内的伸展モーメントアーム)の距離を稼ぐことができ、結果として筋出力効率が向上することになります。
膝蓋骨(膝蓋大腿関節)の運動学
膝蓋骨は下図の通り、膝の屈曲とともに下方やや内方に動き、膝の伸展とともに上方やや外側に動きます。
この動きにより、効率的でスムースな膝関節の屈伸がなされます。
図左:膝関節屈曲135°:下方変位
図中:膝関節屈曲90°:中間位
図右:膝関節20°:上方変位
膝蓋骨の痛みの原因
膝蓋骨自体が外方、上方に変位することが膝蓋骨の痛みの最大の要因になります。
膝蓋骨は解剖学的にみても関節運動学的に見ても、外方・上方に変位しやすくなっています。それは正常な膝蓋骨と大腿骨、脛骨とのアライメント不良、周辺の筋肉の出力不均衡が原因で生じます。詳細は以下です。
膝関節の過剰な外反
膝関節(脛骨大腿関節)は大腿骨と脛骨で形成されますが、大腿骨骨軸に対して結んだ線と脛骨の骨軸を結んだ線は軽度外方に傾斜しております。したがって膝関節は通常立位では軽度外反位にあるということになります。(FTAという)
下図にあるように骨盤の上前腸骨棘(Anterior Superior illiac spine)から膝蓋骨中央に向かって引いた線と脛骨粗面から膝蓋骨中央に向かって引いた線の交点で形成される角のことを「Qアングル」と呼ばれます。
膝関節が外反位の状態での大腿四頭筋の作用は、膝蓋骨を軽度外上方へ変位させる方向に働きます。Qアングルが大きくなるほど、つまり膝関節の外反が強くなるほど膝蓋骨はさらに外方へ変位します。膝蓋骨が外方へ変位することで、膝蓋骨の内下方関節面には圧迫ストレスがかかり、これが膝蓋骨の痛みを引き起こします。膝蓋骨の内側にある内側膝蓋支帯にも伸張ストレスがかかり、これも膝蓋骨周辺の痛みの原因になります。
内側広筋斜頭の出力不足
内側広筋の遠位部は解剖学的に内側広筋斜頭(VMO)と呼ばれておりますが、VMOの機能は膝関節伸展最終域での脛骨外旋(スクリューホームドムーブメント)と膝蓋骨の内方固定です。外上方変位しやすい膝蓋骨を内方へ固定する機能は正常な膝蓋骨運動を維持するうえで重要ですが、VMOの出力不足により膝蓋骨の内方固定ができずに結果的に膝蓋骨の外上方変位し膝蓋骨内側下部の痛みにつながります。
腸脛靭帯の過緊張
腸脛靭帯は、大転子から膝関節をまたいで脛骨外側へ付着しますが、一部の線維が膝蓋骨の外方へも線維を伸ばしており、また腸脛靭帯には大腿骨内旋の作用もあるため、この筋肉の緊張は結果的に膝蓋骨の外方変位を生じやすくさせ、膝蓋骨の痛みにつながります。
殿筋群(股関節外転筋群)の出力不足
中殿筋などの殿筋には、股関節(大腿骨)を外転(外旋作用も)させる作用があり、この筋群の出力不足は大腿骨の内旋をもたらします。大腿骨の過内旋に伴って膝蓋骨の外方変位が生じやすくなることで、膝蓋骨の痛みにつながります。
膝蓋骨(膝蓋大腿関節)痛の治療法
関節運動学的な治療アプローチ
膝蓋骨の外上方変位の原因となる関節アライメントを関節運動学テクニックを用いて調整します。股関節(大腿骨)内旋、脛骨外旋、足関節回内変位の修正を行ったうえで、膝蓋骨の内方移動を他動運動や抵抗運動を取り入れながら活性化していきます。
膝蓋支帯・大腿四頭筋腱、腸脛靭帯リリース
膝蓋骨痛が生じている多くのケースで、膝蓋支帯内側、大腿四頭筋腱、腸脛靭帯は癒着、線維化が生じています。繊維質になっている組織は、血流低下、線維同士の癒着などの悪循環が生じているため、リリーステクニックを用いて改善させていきます。
足関節・足底部のアライメント調整
膝関節の外反が生じている場合、足関節は回内変形していることが多く、多くは足底部の外反扁平位足を併発しています。足関節の距骨、舟状骨、立方骨あたりのアライメントを修正し、足関節部の回内変形を解消させることは、膝関節痛の治療では重要です。
膝蓋骨(膝蓋大腿関節)痛に対する運動療法
①内側広筋斜頭(VMO)の活性化
②臀部外転筋群の活性化
②各姿位でのアライメントの再教育
→立位アライメントの修正、スクワット動作の修正、ジャンプ着地動作の修正 など
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