感覚入力の重要性(フレイルの予防)

  • 2021年3月7日
  • 2021年4月15日
  • 思想
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今回の内容はは、「感覚入力」について書いております。
本題に入るまでの前置きがやや長くなりますが、個人的に最も危惧している案件のため、最初からお読みいただけますと幸いです。

(以下グラフは、ネット版「日本経済新聞」2021年2月22日より抜粋。)

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上のグラフは、2020年1月~9月までの例年対比での主な死因の増減を表したものです。

ここでは、上のグラフの数字が正しいもの(意思いれされていないもの)として話を進めますが、日頃より一般のニュースを無条件に鵜呑みにしていない方であれば、この数字の不可解さには気づくでしょう。
(そのあたりは、P〇R検査がどういう検査なのかということをを一から知る必要があるので、ここでは省略)

そして私がここで一番重大に考えているのは、「老衰による死亡者数の急激な増加」です。

本来なら、「老衰による最期=その方の寿命」となる場合も多いかと思うので、それはある意味、「いい最期」を迎えられたと言われることも多いと思います。

しかし、、このデータにある通りに本当にこの増加のすべてが老衰による「いい最期」だったのでしょうか。もっというなら本当の意味での自然な老衰であったのでしょうか。個人的には疑問視しています。
一個人が憶測で断定するのはよくないですが、「いい最期でなかった」方が多数いたのではないかと思います。これはご本人だけでなく、そのご家族や親せき、ご友人にとってものことです。

昨年末から今年になってテレビニュースなどでにわかに「高齢者のフレイル」というフレーズが頻繁に聞かれるようになりました。フレイルとは英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっおり、「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味します。

つまり、加齢などが原因で運動能力や認知機能や免疫機能が低下し、四肢(特に下肢)の筋力低下、栄養代謝障害、易細菌感染性を示したりなど、様々な生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態を表します。ただし、初期の段階であれば、周囲の人の支援なども加わることでフレイル状態から脱却できる場合もあります。したがって「フレイル」とは、「要介護状態に陥る前段階の状態」とも言い換えることができます。

そしてこの「フレイル状態に陥っている方」が、新型〇〇ナにより急増しているとのことです。長期間にわたる自粛生活で身体活動量が減少し、活動量が減ることで筋力が低下する、活動量が低下することにより食欲もなくなり栄養摂取量が落ち、代謝機能も低下する、社会(他人)との交流も減少するため、機能低下は認知までに及ぶといった一連の「悪循環」が一定期間続き、最終的には「要介護状態」になり、そのまま機能回復することもなく最期を迎えられることになってしまうかもしれません。そしてこの場合言うまでもなく最終的な死因は「老衰」となるでしょう。(「老衰」としてカウントされるでしょう。)

このような問題は当然起こりえることであり、私は当初より危惧していましたが、ニュースではさも突然偶発的に起こった問題かのように報道しています。
そしてこの問題を解決するために各地域で「オンラインによるフレイル予防体操なるもの」が開催されていますが、オンラインというところに何か違和感を感じてしまいます。

一連の新型〇〇ナ問題に対する考え方について日頃から個人的に思っていることをここで述べたいところですが、莫大な文字数になってしまうのとなかなか本題に入ることができないのでこの辺でやめておきます。そして末端の徒手療法家の立場として、フレイル予防・身体機能維持向上のための運動療法を感覚入力という視点に立ってご紹介したいと思います。


●感覚入力の重要性●

私たち人間が自分の身体を動かすとき、基本的には中枢神経(主に大脳運動野)からの指令を脊髄を介して上半身や下半身を中心に分布する末梢神経に伝えることによって、筋肉が各関節を動かしています。

そしてこの身体を動かす前段階として必ず、脳への何らかの意思や感覚入力が先行して起こっています。例えば、「のどが渇いたので(感覚入力)、冷たい飲み物が欲しくなり(意思の発生)、冷蔵庫の水に手を伸ばす(運動遂行)」といったものがそれにあたります。

したがって「感覚→意思→運動」はセットになることが多く、これらの項目は私たちの日々の行動ではすべて重要な機能となっています。

私も日々の患者さんの施術(運動療法)を実施するなかでも、特に感覚入力の向上に重点を置いたメニューを取り入れることを意識していますが、それらを以下にご紹介したいと思います。


●感覚入力向上のためのトレーニング●

ポイント:普段無意識で働いている神経機能に着目し、それらの活性化を促す。
 

1.呼吸法(横隔膜呼吸)をおこなう
呼吸は私たちが生命活動を行うう上で、最も重要な行為の1つです。呼吸は脳の延髄にある呼吸中枢(吻側延髄外側野)でコントロールされており、それらは通常は無意識で行われています。

呼吸は一般成人では1日2万回行われているといわれていますが、この普段無意識の感覚(呼吸)に意識を向けることで、身体感覚入力の向上につなげるというのが目的です。そして同じ2万回の呼吸でも「正しい呼吸」と「正しくない呼吸」というものがあります。ここでは「正しい呼吸」というものをご紹介させていただきます。以下にも示している通り、「正しい呼吸」には感覚入力向上の効果以外にも身体への様々な効果があると言われております。

「正しい呼吸のやり方」

(呼吸器疾患、高血圧症などの基礎疾患がある場合は念のためドクターに相談されることがのぞましい)
①常に鼻呼吸:空気の通りを常に鼻腔で感じながら(口呼吸×)
②静かな呼吸:息使いが隣の人に聞こえないくらい
また呼吸中、肩や首の筋肉が上下しないように

③腹式呼吸 :息を吸ったときお腹の前だけでなく、横・腰側まで膨らむように
④一定の呼吸:5秒吸う→5秒吐く→3~5秒止めるといった具合に一定のリズムで呼吸し、息を吐いた後数秒止まる時間がある(苦しい場合は決して無理しない)


この呼吸法を1回5分~10分程度でいいので、1日の中で複数セット実施されるとより効果的でしょう。(朝起きた時、寝る前が最も良い)

一連の呼吸をしている際、吸気で空気が鼻腔から入ってお腹が膨らみ、呼気でお腹が凹み鼻腔から空気が出て行く感覚を常に意識し続けることが重要です。

正しい呼吸は感覚入力の活性化への効果はもちろん、鼻呼吸をすることで鼻の粘膜(鼻甲介)を空気が通過する間に暖められたり、粘膜で細菌・ウイルスの侵入を阻止しやすくなり風邪を引きにくくなったりする「自然免疫機能活性」の効果、また鼻腔粘膜で分泌される一酸化窒素(NO)は血管拡張作用(血圧低下に作用する)などもあります。

そして静かな呼吸を心がけることで、呼吸に最も重要な筋肉である横隔膜の使用度が増加し、代わりに呼吸補助筋である頚や肩回りの筋肉の使用が減少する。これらは肩こりの改善や疲労感の低下(省エネ)にもつながり、横隔膜が正しく機能することで、姿勢改善にもつながります。



2.深部感覚/空間認知機能を改善させる

 深部感覚とは、「位置覚」や「定位感覚」や「振動覚」と呼ばれる身体感覚のことで、立っている際の体の傾き具合や姿勢、関節の屈曲角度を検知し脳に伝達することで、身体バランス感覚の統制したり、動作中の位置情報の脳への伝達する機能(例えば、目をつむった状態で自分の片方の親指をもう片方の手のひらでつかむことができるなど)、身体への振動刺激などを皮膚にある受容器で感知し、大脳へ伝える機能などがそれらにあたります。

上述の通り、深部感覚は立っていたり、歩いたりする際のバランス感覚に強く関係するため、この機能の低下は転倒などのリスクを高めることになります。

ご高齢者にとって、筋力維持はもちろん重要ですが、それと同じくらいこの深部感覚の働きは重要になってきます。仮に筋力が十分でも深部感覚が低下していれば、歩く時の下半身や体幹からの感覚情報が脳にうまく伝わらず、バランスが維持することが難しくなり、それに伴って転倒に対する恐怖心を覚え、歩くこと自体をためらうことになるでしょう。深部感覚の情報入力は大脳だけでなく、運動制御の中心的役割を担う小脳などにも連携しているため、結果的に小脳の機能も低下する可能性があります。

深部感覚は、身体不活動により低下するほか、捻挫や靭帯損傷(半月板損傷も)などの外傷、椎間板ヘルニアなどの神経障害性の疾患でも低下すると言われていますが、適切な運動療法をすることで改善させることもできます。

そして深部感覚を検知し、大脳へ入力するための感覚器(受容器)は足底や膝関節などの靭帯・半月板に多く存在しています。したがって深部感覚のトレーニングを行う上で重要なポイントは、立位の場合なら足裏や膝関節の感覚に意識をフォーカスさせることです。ご高齢者向けの深部感覚トレーニングとして以下になります。

「深部感覚トレーニング」

①足底でボール転がし:柔らかいボールなどを踏みつけながら転がす
 →ただ転がすだけでも良いが、押し付けながら転がしたほうがより効果的
  ボールが足から外れないようにコントロールする

②立位保持(両脚立脚/片脚立脚)・・・目標20秒間
 →前後左右にできるだけぶれないように。
 →可能であれば、目をつむった状態でも行う。
 (すぐ横に柱などの支えや見守りの人がいること前提)

③継脚立脚位保持・・・目標20秒間
 →前後左右にできるだけぶれないように。
 →可能であれば、目をつむった状態でも行う。
 (すぐ横に柱などの支えや見守りの人がいること前提)

④閉眼でその場足踏み・・・20回程度
横歩き/後ろ歩き(開眼で可)
・・・それぞれ5歩程度
⑥上記①~⑤を先に実施したうえで、屋外の散歩をしたり、家の中でもよいので歩いたり立位で行動する時間をできるだけ増やす。

(可能な限り短時間でもよいので屋外に出て日光を浴びて、近所の方と会話をするなどしながら歩くのが理想です。)

※全ての種目で、足裏と地面が接している感覚を意識する。裸足でおこなうのがのぞましい。
※いずれも転倒には細心の注意を払う。閉眼立位では手の届く範囲に柱や手すりなどがあるのが望ましい。
※可能であれば、ご家族など見守りする方がいるのが望ましい


以上、種目としては単純な種目ですが、歩くという動作を実行する上での大切な能力(感覚入力)であり、これらはすべて私が整形外科クリニック勤務時にたくさんのご高齢の患者さんに実践頂いて、効果があったものです。ぜひお試ししていただきたいです。


ちなみに、これだけやっていればフレイル回避ができるとは当然思ってはいなく、何よりもご高齢者との日々の「敬意を持った真剣なコミュニケーション」が大切だといつも思っております。それはご高齢者に対して、不自然に気の利いたやさしい言葉をかけろというようなことではなく、より自然な態度でコミュニケーションをとる姿勢が重要だと思います。

もし今回の新型〇〇ナの感染予防対策として、ご高齢者ご本人が自らすすんで様々な社会活動を自粛するという選択をしているのであれば、それはご本人の意思による1つの手段ですので仕方ないでしょう。その方の症状(ご病気)・現段階での体力やその時々の状況によっては、他との交流を制限せざるをえないことも少なからずあると思うからです。

しかしそれが、「ご高齢者に〇〇ナをうつさないため」と表面上は最もらしいことを言っておきながら、実は自分が世間体や同調圧力に屈したことにより、いま現段階で自立して動ける(生活できる)ご高齢者の社会活動を本人の意に反して過度に抑圧しているのなら、それはご高齢者1人1人の人生に対して重大な不利益を与えている可能性があるということを自覚する必要があるかもしれません。

「他人や高齢者にうつさない」という善意(表面的なことが多い)が、実は高齢者の自立能力を早期に低下させてしまっているかもしれないということです。

(繰り返しになりますが、持病などの症状やその時の健康状態、その時の状況によっては外出を控えたほうがよい時もあるということはもちろん承知しています。)

「言うは易し」ではあるかもしれませんが、少しでも現状が改善されればと思います。


とくやま徒手療法研究所・施術院

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