股関節インピンジメント(FAI)

股関節インピンジメント(FAI=Femoro-Acetabular-Impingement)は、股関節を形成している大腿骨(大腿骨頭)と寛骨臼蓋部の衝突(Impingement)によって生じる症状のことです。

繰り返される股関節部でのインピンジメントが変形性股関節症や関節唇損傷の原因にもなると言われています。

関節唇は、股関節(大腿骨頭)の周りを取り囲み、股関節部の安定化機構としてはたらいている軟部組織のことです。

1.発生起点・要因

先天的な股関節形状の問題(下図のCam/Pincer型)がある場合と、日常生活、スポーツ活動での開排動作や内旋動作などの動作の際に股関節部で大腿骨頭と臼蓋でのインピンジメントがおこり、インピンジメントによる軟骨組織の軽微な損傷の積み重ねが原因となり発症することも多いです。

2.分類

FAIには大きく分けて2つのタイプがあります。

①Camタイプ(上図中)
 骨頭の付け根部分の球形が過剰に膨隆(中図、濃い赤色部分)していることが原因で、股関節を屈曲や内旋する際に隆起部分が寛骨臼蓋前縁部分と衝突することで起こるタイプです。
小児期のペルテス病や大腿骨頭すべり症、大腿骨頚部骨折等が原因で後天的に発症することもあります。


②Pincerタイプ(上図右)
臼蓋部の被覆が過剰となり(右図、赤色部分)、同じく股関節屈曲や内旋する際に衝突することで起こるタイプです。

③Combinedタイプ
CamタイプとPincerタイプの組み合わさったものになります。

3.症状

鼠径部痛や大腿前方部の疼痛をうったえます。痛みは股関節の奥の方からの痛みがあります。
特に股関節屈曲内旋の複合動作で可動域制限とともに痛みは増悪することが特徴的です。

そして多くの場合、大腿骨頭部は前方に変位(前にずれる)していることが多く、これが股関節屈曲内旋の可動域を制限するとともに、インピンジメントの要因となっていることが多いです。

4.徒手検査法

①Anterior Labral Tear Sign
股関節90°屈曲位から内転内旋ストレスを加えた際に、股関節内方深部の痛みと可動域制限(つまり感)が感じられれば陽性。

②Patrickテスト
股関節屈曲90°から外転外旋ストレスをかけた際に、股関節前方部の痛みと大腿骨頭の前方変位がみられれば陽性となる。痛みについては、Anterior Labral Tear Signほど顕著には出現しないことも多い。

5.治療法

①大腿骨頭前方変位の改善
上記のように、FAIでは大腿骨頭が臼蓋に対して軽度前方変位していることが多いため、これを改善させることは最重要になります。

②周辺組織(関節包・靭帯・筋肉)へのアプローチ
インピンジメントを起こすことで、股関節周辺組織は炎症しやすくなり、結果的に関節包・靭帯・筋肉などの軟部組織は拘縮、癒着を起こしやすくなり、これらを改善することは症状を改善させるうえで非常に重要です。

6.運動療法

症状が改善次第、股関節屈曲運動を中心に行っていきます。
股関節屈曲筋である腸腰筋を活性化することは特に重要となってきます。
腸腰筋には股関節屈曲のほか、股関節(大腿骨頭)を臼蓋に安定させる機能もあり、関節部での安定化は股関節のすべての運動方向に対しても重要となってきますので、特に重点的に鍛えて(活性化)いきます。

(Next Level Physical Therapy様 Youtube動画より引用)

※Next Level Physical Therapy様より引用

また、中殿筋や小殿筋などその他の股関節・骨盤周囲筋、体幹筋などもバランスよく鍛えていきます。

詳細は、当院までお気軽にお問合せください。

とくやま徒手療法研究所・施術院

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